いままで累計で1,000記事以上の納品を行ってきました。すべての納品記事が公開されているかどうかはすべて把握できません。また、納品後も関係の続くクライアント様もいれば、依頼頻度が少なくなっているクライアント様もいます。
いろいろな憶測の中で継続依頼の対象から外れることも考えられます。もちろん力量不足という面や、記事コンテンツ制作予算などもひとつの要因でしょう。
クライアント様は、ライターを育てることが目的ではありません。百戦錬磨の経験をコンテンツに反映してくれるプロのライターを求めて依頼してくるわけです。その目的に応えるため、「読まれて行動される記事」をつくることが課せられた使命ではないでしょうか。
そこで疑問というか認識のズレと判断することを記事化しました。
今回は、フィードバックはライター育成目的であり、すべてクライアント様に求めるのは時間の詐取ではないか?という考えを伝えます。
納品記事のフィードバック
GoogleドキュメントやWord形式で納品した記事は、本文カラムの右側カラムに表示されるコメント機能でフィードバックすることが可能です。コメント機能では、返信もできます。フィードバックは、納品した記事に対して疑問点や修正依頼などを残す依頼者側の対応です。学生時代の提出した試験用紙に書き込まれる添削コメントのようなイメージですね。
自分では、最高の出来栄えと思って納品した記事でも、第三者の視点でチェックされることで新たな問題点が見つかるかもしれません。そのような効果を期待できる作業が納品後の依頼者によるフィードバックです。
また、Googleドキュメントの場合は右上部にある「提案モード」に切り替えることで、フィードバックした部分を取り消し線と別の色で表示でき、差し替えて欲しい提案内容をさらに別の色で表示できます。フィードバックのやり取りが増えた場合、「最初のほうが良かった」となる場合もあります。そのため、提案や修正なども残し、複数の担当者による記事の変容を把握できるでしょう。
フィードバックのメリット
フィードバックは、次のようなメリットを期待できます。
ライターの学びや気づきにつながる
フィードバックは、ひとりで文章を作成するWebライターにとって外部の意見が生かせる機会と考えられます。文章の精度に対して、自己判断のままだと誤字脱字や表記ゆれ、主語述語のねじれなどを見落としてしまう可能性があります。
現代では、文章を推敲校正するツールなどが複数ありますが有料無料を問わず、ツールでチェックしても見落とされるエラーは存在します。逆に、ツールのチェックはそれぞれ特徴があり、ツールごとのチェック傾向がかたよる場合があります。
実際に試した結果から次のような特徴を実感しています。
文章推敲校正ツール5選
●固有名詞の表記で指摘が多い「Web→ウェブ」など
●「なります」→「です」への変更を強いられる
●助詞不足の指摘が的確「これらグループは→これらのグループは」、「リードできる→リードができる」など
●略しがち「体験ができます→体験できます」、「収益を見込むことができます→収益が見込めます」など
●半角全角関わらずスペース(脱字)を逐一指摘
●「~を行う」に対して「~をする」への変更を促す
これらのツールをすべて使って、エラーやミスがなければ、最終的に肉眼でもう一度読んでみて判断しましょう。意外と、すべてのツールをスルーしてしまう誤字などがあるものです。
ここまでチェックして、納品したとしても容赦なくフィードバックを返されることがあります。その意図は、後述しますが・・・
複数の人の携わりで記事の多様性がふくらむ
フィードバックのメリットは、複数の人が携わりで記事の多様性がふくらむ点ではないでしょうか。文章推敲校正ツールにしてもそれぞれの特徴があって、「こんなことまで指摘するのか」という気づきを得られます。
さらに、出来上がった文章を複数のチェッカーが読んだ場合、十人十色の意見が反映されます。記事コンテンツ制作チームの場合は、推敲校正担当のエキスパートがいるだけではなく、段階的にチェックできる記事チェックシートのようなものを使っています。
チームで共有できる具体的なチェックシート(執筆ルール)があれば、納品記事チェック担当者のスキルに関係なく同じ目線でフィードバックを受けられるでしょう。その場合は、記事の多様性というより、ひとつのルールに固められた記事が出来上がるというイメージです。
フィードバックにより執筆スキルが向上する
何はともあれ、フィードバックを受けて、修正し文章自体が「読みやすく伝わりやすい文章」に進化すれば品質も向上するでしょう。納品した記事のフィードバックを次の記事執筆に反映できれば、執筆スキルは上がります。少なくとも、同じミスなどの指摘が減るため、フィードバックも少なります。結果的にフィードバックする側もされる側も工数が削減できるため、お互いにメリットと考えられるでしょう。
フィードバックが引き起こす問題点
フィードバックは、ライターのスキルを上げる役割を持ち、記事の品質向上も期待できます。ただし、フィードバックにも問題点が考えれます。本来ならば、記事コンテンツ作成はWeb上に記事を公開することが目的です。フィードバックは、その目的から外れてしまう可能性もあります。つまり、記事作成ではなくフィードバックが目的になってしまうことです。この状態は、自分の執筆スキルに慢心しているディレクターが陥ることが考えられます。
- 何が何でもフィードバックを入れようとする
- フィードバックしないと仕事をしていないと思われる
- フィードバックで上から目線で優越感に浸りたい
- Googleドキュメントの右カラムをフィードバック100件以上で埋め尽くしたい
ここまでくると、業務プロセスの精度を落とす欠陥になるかもしれません。記事コンテンツをチーム一丸で作るというよりは、推敲校正職人の属人的な業務に周囲が振り回されるだけの状態となるでしょう。さらに、フィードバックは次の問題も引き起こします。
記事公開までのスピード感を失う
フィードバックすることが目的になってしまうと、記事公開までのスピードは落ちてしまいます。そのため、公開する記事の目的について、再考する必要があるでしょう。
たとえば、10人のフィードバッカーのチェックをすべて通過することが公開条件とかであれば、その目的で進めるしかありません。その10人のフィードバッカーが著名人や権威ある専門家であれば、完成記事のアピールにもなるでしょう。
このような目的ではなければ、「どのような記事にするのが目的なのか」を明確化する必要があります。追求する部分を具体的に決めておかないと、ライターだけではなくチェック担当者まで目的からブレてしまいます。
主観と客観の温度差で出口が見えなくなる
記事執筆の完全なる教科書があれば、それに従うだけです。しかし、指標となる部分があいまいなままだと担当者次第で観点が変わってしまいます。そのままの状態で続けることで、主観と客観の温度差が生まれます。すると、出口は見えなくなり記事は未完成のまま放置されるかもしれません。
ライターの観点と記事チェック担当者の観点は異なります。お互いに、いままでの経験や知見などから培った部分が主観となって反映される可能性があります。とくに記事執筆ルールがあいまいだと、フィードバックに主観が入ることも考えられます。
主観的なフィードバックには、対処法がありません。チェックする人の思いつきと思われても仕方ないことでしょう。主観と客観の温度差をなくすには、具体的なルールの設定は必要です。
受発注した両者の時間搾取となる
フィードバックで出口が見えなければ、チェックする発注者の時間や手間がかかります。さらに正解の見えない記事執筆は、ライターの時間と手間も増やします。結果的に、受発注した両者の時間搾取とも考えられます。「これだけ手間ひまをかけた記事だよ」と自己満足したいのであれば、問題ありません。そうでなければ、出口のないフィードバックは属人的な業務生成となるだけだと考えられます。
フィードバックする前に具体的なレギュレーションが必要
フィードバックの問題点を解決する方法は、ただひとつです。フィードバックする側は、事前に具体的なレギュレーションを作成しておきましょう。具体的なレギュレーションをライターと共有できれば、主観的なフィードバックも減らせます。
また、ライターにとってはレギュレーションがお守りの代わりです。レギュレーションに沿って執筆したことで問題はないはず。ライターに対して、それ以上の表現力や文章力を求めるのであれば、一度自由に執筆してもらうことも必要ではないでしょうか。
納品後の記事に対して発注者が主観的に編集することもあるでしょう。フィードバックは、フィードバックする目的を明確にしなければ、問題を起こす可能性もあるので注意が必要です。
総括
実際の業務委託では、具体的なレギュレーションや成果地点(目標)がなければフィードバックが負担になる
学習またはスキルアップ目的であれば、フィードバックから気づきや学びを得られる
・・・と、まとめてみました。